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黒い春 山田宗樹

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この手の小説を読むときは、まず最初に、ウィルスなのか細菌なのかを知っておく必要があります。本作の主役の「さび菌」は、キノコ・カビ等と同類で、菌類と呼ばれ、細菌とは別の生物として区分けされるそうです。もちろんウィルスでもない。従って本作は、通常のウィルスパニック小説とは違い、爆発的に感染力が高いわけでもなく、空気感染はもちろんのこと、人から人への感染すら起きない。パニックがない。そこが怖さを感じない要因になっている。さび菌のとげとげした夏胞子が、あるいは冬胞子から形成される担子胞子が人体に入り、新たな真菌症を引き起こし、多数の犠牲者が出るという物語です。(現実的には人体に寄生するさび菌はない。)キノコ中毒や食中毒,カビによるアレルギーも真菌症に分類される。


著者は作家になる以前、大学院で植物寄生菌の研究に携わっていたので、かなりマニアックな物語に仕上がっています。ただしこの話は小難しい医学問題だけではなく、壮大な歴史問題が絡んできます。真菌症の正体を追いかけていくと、聖徳太子が派遣した遣隋使、すなわち小野妹子に関係があったというとんでもない展開になっていく。・・・・・。夫婦愛は感動できます。

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WOWOWでドラマ化されたそうですね。