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サウスバウンド 奥田

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かなり笑える。左翼ネタである。
主人公は元過激派でアナーキスト。成田で活躍した闘士。いまは「お父さん」
物語は息子の二郎の視点で描かれている。
このお父さんが、どういう人物なのか本文から一部抜粋。

お父さんと二郎の会話
お父さん「おまえ、不良中学生にタカられているんだってな。頭はやめておけよ」

二郎「アタマ?」

お父さん「鉄パイプでうしろを闇討ちする場合だ。頭はもしものときがあるからな、俺のおすすめは膝の裏側だ。あそこは鍛えようがないから実にもろくてな。うまくいけば腱が切れてくれて三ヶ月は松葉杖だ。昔、民青の内ゲバに首を突っ込んだとき、改革派のリーダーをその手で引退させたことがある。」


お父さんと国民年金の取立てに来たおばさんの会話
お父さん「とっとと帰れ、国民年金なんぞ、払わんと言ったら払わん」

おばさん「上原さん、国民の義務なんですよ」

お父さん「どういう義務だ。展開してみろ」

おばさん「テンカイ?だから国民の義務なんです。」

お父さん「じゃあ国民をやめた、日本国民であることをやめる。人を国民に仕立てて税をむしりとる。ならば人は生まれながらにして被支配者層ということになる。」


お父さんと学校の先生の会話
お父さん「うちの息子が君が代を歌わないといったら先生、どうする?」

先生「はい?」

お父さん「この国に生まれたら無条件に国民としての義務が生じるのはおかしいと思わないか?何かを押し付けられるということは支配されているということと同義だろう。人は支配されるために生まれてくるのか?」

お母さん「お父さん、そういう話はまた今度。先生、家庭訪問の途中だから。」


お母さんは若いころ、御茶ノ水のジャンヌダルグと呼ばれていたそうです。
とにかく左翼ギャグが私のツボにはまりました。


私は自民党とNHKと郵便局を最も信頼するおだやなか人間です。
総理大臣をすぐに批判するマスコミも大嫌いでした。
警察も頼りにしているし嫌いではありません。
だから私は左翼がすごく嫌いでした。
権力をすぐに批判したがる青臭い連中だと思っていました。
しかしこの本を読んですこし考え方が変わりました。

腹をたてるということは必要なのだ。
私の場合、何事にも従順でおとなしい人間である。物分りがよすぎるのである。
波風をたてるということはまったくないが、それはやさしさというよりも
弱さであるし保身であるともいえるし狡さだともいえる。

それに対しこの小説の主人公は、つまらない、ささいなことで怒る。
どんな小さなことでも腹をたてて喧嘩をしかけるというのは案外悪いことではないと思う。
この本を読んで大笑いするとともに勉強させられました。


いま、私はすごい戦いをしている最中なので
そういうふうに思うのかもしれません。
私も長い間、生きてきました。
過去の自分を振り返ってみるとあまりにも従順すぎる。
この本を読んで改めて「生き方」について考えさせられました