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「海と毒薬」 遠藤周作

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息子と談笑するやさしいお父さんも戦争中では大勢の人を殺し鮮血を体に浴びていた。
また人の命を助ける医者がいる。その医者は戦時中、人体解剖にかかわっていた。

それでも人間なのです。

主役は勝呂という医者。彼は自分の背負っている罪に苦しんで生きていました。

いま、私たちは平和だから人間でいられる。
それだけのことだと思います。人間は環境によっていつでも変化する。環境が変われば人を愛することさえできない。

むかし「すべては愛のために」という恋愛映画を見たとき
アフリカの餓死寸前の難民たちをそこでみました。→チェック。

難民たちをみてわたしは、なぜか分かりませんが・・彼らは恋愛すらできないのだと感じた。難民は愛することよりもひたすら生きることしか頭にない。そしてそれとは対象的にその映画の中のヒロインは大恋愛をし、アフリカの惨状に涙を流し血の通った人間らしさをみせていた。

しかしその人間らしさは極端なことを言えば毎日ごはんが食べられるからなのです。
正常な健康状態だからこそ人を愛せる。


罪を自覚しながら生きている勝呂という医者のほかに戸田という医者が登場します。彼は自分の行動をすべて肯定している。罪の意識が無い。2人は対象的に描かれていました。
この小説を読んでいると、なんの罪も感じずにのうのうと生きている自分に対して罪の自覚を促される。私はキリスト信者ではありませんが「人は誰もが罪人だ」という教えは正しいと思う。 
少なくとも罪を自覚して生きている人は他人にやさしい。