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「グラスホッパー」伊坂幸太郎

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本作は、殺し屋がたくさん登場するので、子供っぽい小説かなと思って読んでいました。

印象に残った場面があります。

妻を殺された無職の夫が、人生に絶望していたときに、
子犬たちが、がむしゃらに餌を食べているテレビ番組をみます。
それをみて男は、「生きなくてはいけない」と急に思って、
求人誌を買いにいくシーンがあります。
男いわく「子犬の馬鹿げた生命力」を見ていたら不思議と力がわいてきた、といいます。


馬鹿げた生命力・・

それはつまり人間がいつも必要以上に、忌み嫌う動物的な本能のことだと思う。
淫らな性欲、怠情な睡眠欲、卑しい食欲など。

「おまえ、それじゃ動物と一緒だよ」

と言われたらそれは悪口を言われたと誰もが思うでしょう。 

しかし、生きる原動力というのは、この馬鹿げた生命力だと思う。

男は妻を亡くして生きる目的を失っていた・・。でも生きる目的ってなんだ?

私たちは自分の存在理由や、尊厳がなくては生きられないのか?
私は、それは違うと思うのです。


人間は動物だ、


生きたいと思うのは


本能だ、


生きる目的?


冗談じゃない、


ただひたすら


生きるのみだ。
 



ここでちょっとクールダウンして、最近ニュースで話題になっている自殺問題を考えます。
 「馬鹿げた生命力」は、
高等な生物である人間であっても子犬であっても誰もが持っています。
ただ人間はそれを低俗なものだと無意識に考えて抑圧しているのだと思う。