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「グロテスク」桐野夏生_e0065456_2224669.jpg


桐野女王の野心作!


昼は一流企業(東京電力)で働いていて夜は娼婦をしていた女性が殺される話(実話)


なんつーか悪趣味・・。
私は桐野さんはもともと悪女だと思っているから別に腹も立たないが他の人が読むと怒るかもしれない。
実際に殺された女性がモデルにされてかわいそう・・とも思うのだけれども小説の内容は圧巻である。息がつまりそうになる。誰が殺したか?なんてこの小説には関係が無い。とことん殺された女性の深層心理を深くえぐっていく。その描写はまさにグロテスク。 この小説を読んで「自意識」というものがどれほど人間を壊すものかよく分かります
「リトルターン」 ブルック・ニューマン _e0065456_21552917.jpg
絵本です。一言でいえば、飛ばなくなった鳥の話です。飛べない鳥=鬱にかかってしまった人間(力が出なくなった人間) というメタファー(隠喩)になっていた。 
興味深いのは、飛べなくなった鳥が

「おれ様は鳥なんだから飛べるはずだ」
と、飛べない自分を否定しているところです。

それがあるとき、

「俺はやっぱり鳥だけど飛べないのだ」
と、自分の現状を認めたとき、ようやく飛べるようになります。


ある意味でこれは大きな人生の教訓であると言える。

普通、人は自分の身に訪れた不幸をなかなか受け入れることができない。しかし現実を受け入れることが再生の出発点だと思うのです。訳者は五木寛之。
「ニート」 絲山 秋子_e0065456_21501756.jpg

新鋭の芥川賞作家です。

・・・・・・
地味だけど、気にかかってしょうがない作家さんですね








ニート=働いていない若者=シングルパラサイト 
という偏見の方程式が私の中で成り立っています。

シングルパラサイトとは親に寄生するガキのこと。
ようするにひきこもりと言って良いかもしれません。
無職でも食うには困らない連中です。
しかしこの小説のニートは両親から離れて1人暮らしをしている。
無職だから当然お金がなくなり家賃・電気料がなくなりガスまで止められる。
食事も3日に1度しかとれなくなる。
それでも働こうとしない。ここまでくればニートというよりもホームレスでしょう(苦笑) 
働きたくても働く気力が無い・・そういう無気力な人を救おうとしている主人公の物語でした。
どうも作者の経歴を調べていると、自分自身がドロップアウトしてニートの立場になって描いているような気がします。
この作家の小説は何冊か読んでみたけど「ドロップアウトした人間」を描くことが多い。
「疾走」 重松清_e0065456_21135619.jpg


いろいろ人から聞くと、表紙が怖いから読めないという人が多いみたい。
実際はそんなに怖くない・・とは言わない。

なぜなら・・・・・


本当に恐いから! 

私が一番鳥肌がたったのは、一家心中を図ろうとした家族のシーン。

夜中に寝ているときに、ぽんぽんと母親から肩をたたかれて

「エリちゃん、これから私たちと一緒に死なない?」
と言われたら子供はどう思うだろうか?

その娘(エリ)は少なくとも母親に殺されると思い込んで、べットから飛び出して家から逃げ出したのだ。翌朝、両親はやはり自殺していた。

夜中の2時か3時か分からないが、一家心中の巻き添えにされると思い込んだ少女がパジャマ姿のまま、裸足で夜中の町を必死で逃げる描写が鮮明に映像となって頭に浮かんでくる。



私にとって「疾走」とは、この少女の走っている姿がすべてであった。
映画「息子のまなざし」_e0065456_18385795.jpg
2002/ベルギー=フランス/103min
監督・脚本
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ





上の写真の少年とおっさんはどういう関係だと思いますか?

じつはこの少年は・・・
おっさんの息子を殺して刑務所に入っていたのです。
(ネタバレじゃないと思うのであえて言いました)

加害者と被害者の家族がなぜ仲よくしているのかという理由は映画を観てください。

映画「息子のまなざし」_e0065456_18523758.jpg
はたして、おっさんの心を「喪失」させてしまったこの少年は、
おっさんを「再生」させる原動力になっていくのだろうか?

テーマは「復讐」と「赦し」(たぶん)


おっさんの少年に対する感情は怒り、悲しみ、好奇心、諦めが複雑に
絡み合っていたように感じます。とにかくこのおっさんの演技に胸が打たれます。
# by _hanako311 | 2006-04-23 19:04 | 映画(6)