カテゴリ:奥田 英朗(3)( 5 )

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主人公の島崎を見ていると爆弾魔ユナボマーを思い出す。しかし島崎は主人公なので読者が共感しやすいようにナイスガイに描かれている。

このナイスガイがなぜテロを実行しようとしたのか??

いくら島崎が小難しい理屈を並び立てて
「ボクのやっていることはテロではなく、革命だ!ジハードだ!」
と叫んでみても、けっきょく彼を犯罪へと突き進ませた原動力は、「貧しさ」だと私は考える。「罪と罰」のラスコーリニコフ然り。さらにもう1つ付け加えるならば、島崎は作者の分身であり、懐古主義を煽る世間の風潮に対し、「爆弾」というメタファーを用いて、作者は何もかもぶっ壊したかったのではないか。


当時の日本は華やかな東京オリンピック開催の裏で、虐げられた人々が存在した。


e0065456_19593666.jpgそれなのに映画「三丁目の夕日」のように、あのころの日本は良かった、という単純な考えに作者は激しく反発している。










「そんなことはないんだ、あのころの日本で華やかだったのは東京だけだったんだ!」
そういうメッセージがひしひしと伝わってくる。
3丁目の夕日は当時の日本を描いたものではない。あれは東京物語だ。

あの映画のせいで、今と違って昔はいい時代だった、と勘違いする人が増えた。当時の日本は急成長するために、中央集権の道を選択し、「東京」だけに力を注いできた。そしてそのひずみが「地方」に押し寄せた。3丁目の夕日が、昔の日本の光の部分のみにスポットライトを当てた物語ならば、本作は日本の陰の部分にスポットライトを当てた物語であり、その陰というのが、当時の日本の本質である。


島崎という男は、3丁目の夕日を観て泣きながら感動している観客の前に突然現れて
「みなさんが見ている日本は本当の日本ではありません!」
「あなたたちは日本ではなく、東京を見ているだけです!」
と叫んでいる。
中央集権によって、夢と希望のあふれる都に成長した東京。
しかしその反動で、信じられない貧しさの中で苦しんでいる地方の現状。

そして「昭和30年代の日本=東京」
という見せ方をして、懐古主義を煽る3丁目の夕日的な世間の風潮─。
作者はそれが許せなかった─。
真実を知らせたいと思った─。
そういう気持ちが原動力となって
「オリンピックの身代金」は生まれたのではないか。
そして見事にリアルな日本を描ききった。
徹底した細かい描写は呆れるほど圧巻だとおもう。
これは秀逸です。
死ぬまでに是非読んで欲しい1冊です。
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結論から先に言うと抜群に面白い。主人公は2人。愛する妻を事故で失って徐々に精神が壊れていく刑事と、もう1人は夫の犯罪によって家庭が崩壊して壊れていく女。2人の主人公は「放火事件」という接点がありながら、ほとんど絡み合わない。まるで2つの短編を交錯させながら読まされている感覚になる。ひたすら破滅にむかって突き進んでいく2人の物語なので、いつものギャグ満載の著者の作品とは明らかに異質の作品。
少し話はそれますがこの作者は韓国で一番売れている日本人作家なので、読んだことがない人は是非読んで欲しい。



ちなみに警察内部の描写で一番秀逸なのは高村薫の合田刑事シリーズ(レディージョーカー等)


それと比べると物足りませんが、そのぶんユーモアがある。井上という若い刑事が「このガキャ~」「クソガキャ~」と叫びながら、不良少年を追いかけ回す場面は、味があって最高です。ただの善悪では片付けることができない人間劇がそこにあります。彼らは真剣におかしなことをやっている、それが切ない笑いを誘う。コーエン兄弟の映画のテーマである人間模様を彷彿とさせます。


本作は著者の代表作「最悪」と似ている。
抑えつけていた怒りや不満が、何かの拍子に一気に爆発してしまう人物たちを描いている。その象徴が主人公の主婦康子でした。彼女はダメ夫のせいとはいえ、キレてしまった後は次々と犯罪を犯していく。しかし作者はそんな罪深い女性を一貫してやさしい視線で描いている。(九野の視線=作者の視線です)この作者はいつも女性をやさしく描いている。


何を持ってハッピーエンドと思うかは人それぞれでしょう。最後に不良少年と井上刑事のやりとりのなかで、ある事が判明されるわけですが、私はそれをもってこの物語はハッピーエンドと決定いたしました。それと同時に奥田英朗を、村上龍、ドストエフスキー、川端康成に次いで、「女性にやさしい作家」として認定することに決めました。
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かなり笑える。左翼ネタである。
主人公は元過激派でアナーキスト。成田で活躍した闘士。いまは「お父さん」
物語は息子の二郎の視点で描かれている。
このお父さんが、どういう人物なのか本文から一部抜粋。

お父さんと二郎の会話
お父さん「おまえ、不良中学生にタカられているんだってな。頭はやめておけよ」

二郎「アタマ?」

お父さん「鉄パイプでうしろを闇討ちする場合だ。頭はもしものときがあるからな、俺のおすすめは膝の裏側だ。あそこは鍛えようがないから実にもろくてな。うまくいけば腱が切れてくれて三ヶ月は松葉杖だ。昔、民青の内ゲバに首を突っ込んだとき、改革派のリーダーをその手で引退させたことがある。」


お父さんと国民年金の取立てに来たおばさんの会話
お父さん「とっとと帰れ、国民年金なんぞ、払わんと言ったら払わん」

おばさん「上原さん、国民の義務なんですよ」

お父さん「どういう義務だ。展開してみろ」

おばさん「テンカイ?だから国民の義務なんです。」

お父さん「じゃあ国民をやめた、日本国民であることをやめる。人を国民に仕立てて税をむしりとる。ならば人は生まれながらにして被支配者層ということになる。」


お父さんと学校の先生の会話
お父さん「うちの息子が君が代を歌わないといったら先生、どうする?」

先生「はい?」

お父さん「この国に生まれたら無条件に国民としての義務が生じるのはおかしいと思わないか?何かを押し付けられるということは支配されているということと同義だろう。人は支配されるために生まれてくるのか?」

お母さん「お父さん、そういう話はまた今度。先生、家庭訪問の途中だから。」


お母さんは若いころ、御茶ノ水のジャンヌダルグと呼ばれていたそうです。
とにかく左翼ギャグが私のツボにはまりました。


私は自民党とNHKと郵便局を最も信頼するおだやなか人間です。
総理大臣をすぐに批判するマスコミも大嫌いでした。
警察も頼りにしているし嫌いではありません。
だから私は左翼がすごく嫌いでした。
権力をすぐに批判したがる青臭い連中だと思っていました。
しかしこの本を読んですこし考え方が変わりました。

腹をたてるということは必要なのだ。
私の場合、何事にも従順でおとなしい人間である。物分りがよすぎるのである。
波風をたてるということはまったくないが、それはやさしさというよりも
弱さであるし保身であるともいえるし狡さだともいえる。

それに対しこの小説の主人公は、つまらない、ささいなことで怒る。
どんな小さなことでも腹をたてて喧嘩をしかけるというのは案外悪いことではないと思う。
この本を読んで大笑いするとともに勉強させられました。


いま、私はすごい戦いをしている最中なので
そういうふうに思うのかもしれません。
私も長い間、生きてきました。
過去の自分を振り返ってみるとあまりにも従順すぎる。
この本を読んで改めて「生き方」について考えさせられました
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最悪というタイトルの通り、人生最悪の日を迎えた人たちの物語でした。
むかし映画でバカヤロー私、怒っていますというシリーズがありましたが、あれと少し似ている。どういう内容かというと、嫌な思いをいっぱいさせられた主人公はそれでもずっと我慢している。しかし最後になってついにキレてしまう。そして公衆の面前で「バカヤロー」」と叫ぶというものです。

小説のほうもそういう感じでした。大企業にさんざん苛められている下請け工場の経営者、セクハラを受ける女性銀行員、ヤクザにボコボコにされてしまうチンピラの青年。それぞれ短編のように別々にストーリーはすすでいく。彼らは何とか明日はこの逆境を切り抜けられるだろうと思い、必死で耐えている。しかし次から次へと襲ってくる災難。別々に進んでいたストーリーがラストで1つにつながる。その瞬間、抑えていたものが、プチっと切れてしまう。


ようするに「おまえら、みんなバカヤローだ!」という状態である。


逆上した彼らはとんでもない行動に出る。
そしてまさに人生最悪の日を迎えるのであった。
最初は暗くて重苦しいのですが、最後はあまりにも悲惨で涙がとまりませんでした
・・・いや本当です、笑いすぎて涙がとまりません。


人生最悪の日をむかえた連中がヤケクソになって暴れまわります(苦笑)
彼らの行動は、警察やヤクザを巻き込み、マスコミにも報道され、日本全国に知れ渡ります。ありえね~と思いつつも、笑いっぱなしです。たしかにこの小説は重いですが、ラストのドタバタ劇は、不思議なカタルシスを得ることができました。
奥田さんって、こういうドタバタ劇が得意なの?
ここまできたらもう救いようがないだろうというところまで登場人物を追い込み、ラストで大どんでん返しの連続。さあ彼らは最悪の1日を切り抜けることができるのでしょうか。
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はじめて奥田氏の作品を読んだわけですが、率直に言わせていただくと、軽すぎる・・。軽快なノリの娯楽小説ですがこれじゃマンガを読んでいたほうがマシのような気がする。これは限りなくマンガ的でした。ストーリーは数億円のお金をめぐって登場人物たちが右往左往する物語。お金を奪ったと思ったらまた奪われてという描写が延々と続く。そして最後はハッピーエンド、めでたし、めでたしという終わり方。ありきたりでした。唯一この作品の見所といえば3人の主人公の魅力でしょうか。黒川千恵子はクロチエ、横山健治はヨケンというあだ名が ついている ・・もしかして大人が読む本じゃないかも? まああいいけどね
精神年齢はいつだってハタチですから。・・・・。

クロチエは高飛車で、スタイリッシュで、母性本能の強い女性として描かれていました。
(WOWOWでやっていたらしいです。映像はクロチエ。)
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あとの2人の男どもは。。。ほとんど記憶にありませんでした
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