「オーディション」 村上龍
これはラブサイコストーリーだという。いったいどういうジャンルの小説やねん、と突っ込みをいれたくなるところですが私は好きな小説ですね。
かんたんにいえば映画「危険な情事」と同じだと思ってください。
この手の物語は女性の怖さばかりにみんな注目する。本作は男に突然襲い掛かる病的な女が出てきます。「危険な情事」では不倫のもつれによって男を恐怖に陥れる女という物語だったので観客は「怖い女だった」と口をそろえたように言いますが、私は女性に「人格」を与えずにああいうふうに一方的に女性だけを悪者にするのはずるいと感じました。村上龍の本作では、こわい女を描いた物語であっても、ちゃんと女性に人格が与えられていた。だから好きなんです。この小説は男の間抜けさが強調されているように思います。 女性の中身を見ようとはせずに、うわべだけをみて女性を愛していると思い込んだ勘違い男が女性に復讐されるという見方もできる。
村上龍らしい作品です。
女性の怖さよりも、女性の悲しさを描き
そして女性を理解しようとしない男たちへの警告
という見方を私はしました。