「翔ぶが如く」 司馬遼太郎

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司馬さんのベスト3は?

と問われれば迷うことなく私は次の三冊をあげる。
「竜馬がいく」「坂の上の雲」「翔ぶが如く」

本作は西郷隆盛を中心とした薩摩藩のことを描いた長編小説。しょっぱなから笑えます。 薩摩男の川路がパリで、うんこを列車の窓から放り投げる(^^ 司馬先生らしからぬ、しもネタからこの壮大な物語は幕をあけるわけです。本作で強烈に印象に残った言葉は「薩摩隼人」。薩摩隼人と聞くだけで畏敬の念を覚える。それをひとことでは説明ができないのですが、彼らはとくにかく強い、真の武士、猪武者、そして朴訥、無口、誠実。そんなイメージがあります。「ラストサムライ」という外国人がつくった映画に出てくる武士は典型的な薩摩隼人のイメージだと思います。薩摩隼人が敵を暗殺するとき、後ろから相手を通り過ごし、いきなり振り返り、相手の正面から、「きゃっ」と奇声をあげてばっさり剣で一刀両断するのである。そんな斬り方されたら真っ二つにされちゃうかも(苦笑) とにかく薩摩隼人は戦士である。

(これが恐るべし薩摩隼人の武者たち)
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薩摩と並ぶ雄藩の長州は、戦士というよりは、多弁な思想家が多い。武士というのはこの時代、政治家タイプと戦士タイプに二極化していた。たぶん西南戦争で西郷が倒されたのを最後に、本当の武士である薩摩隼人は滅びたのでしょう。

この小説こそ「ラストサムライ」

というタイトルがふさわしい 


それと司馬さんの西郷隆盛観は秀逸です。西郷は「政治家」というよりもむしろ宗教の教祖のような存在だったと言っています。それでようやく納得できました。西郷が仲間の薩摩隼人たちから異常に愛されたのはもちろん彼の人徳によるものですが、あの熱狂的な西郷党はちょっと尋常ではないでしょう?すでにそのころの西郷は本人の意思をはなれて神格化されていたのだと思う。西郷の周りに集まっている人間たちは、熱狂的な西郷支持者であるのと同時に西郷原理主義者でもあったのだと思う。また「改革の象徴」として他藩からも利用されていた面もありました。孤独な西郷像が見えてきます。それとは対照的な人物は、薩摩の大久保。彼は薩摩では異色の官僚型の人間でした。西郷が今でも愛され続けているのに対し大久保は不人気。しかしこの小説を読むと大久保って結構いい奴かも?なんて思ったり(笑)彼は相手の話を聞くとき、相手を怖がらせないようにと、目をつぶって聞くという。このエピソードが好きです。極端に違う2人ですが西郷も大久保も清廉潔白という点では一致していました。

武士とはなんぞや?
と興味がある人は是非この小説を読んでください!
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