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「命」 柳美里

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芥川賞作家の柳美里の小説は、不幸自慢だと評価されることがあります。
ていうか、芥川賞じたいが、不幸自慢大会なのだと言いたい(苦笑)


さて、このキングオブ不幸フェチ作家が、渾身の力を振り絞って描いた「命」は、
凄まじい負のパワーに満ち溢れた本です。


死んでいく命と、生まれてくる命が、

異様な迫力を帯びて描かれている。



まさに実話ならではの迫力。 
内容は、作者が、妻子ある男と不倫をして、その男の子供を産もうとするまでの話です。

この人は、自分の罪や欠陥を、すべてさらけ出して小説を書いてきたと思う。
そういう自分のマイナス面を、肯定もせず、否定もせず、悲観的にならず、自虐的にもならず、ただひたすら淡々とあるがままに描いてきた。

「命」では、柳氏の愛人が末期がんにかかって壮絶な闘病生活が始まる。
作者いわく、血の滲むような思いで描いた、と言いますが、
読んでいる私も熱が出て倒れそうでした。この感覚は読まないと分からないと思います。

生まれてくる赤ちゃんをからは、「生」を実感できない、
末期がんになって死んでいく愛人をみて、それを実感することができる。 

「生」は「死」を意識してはじめて実感できるものだと分かりました。

この「命」1冊で、85万部売れたというからすごい。「不幸」もここまで徹底すればスバラシイ!
by _hanako311 | 2006-12-08 21:35 | 柳美里