精霊の守り人

本誌評価★★★☆☆ 3点
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「中年女」と「ファンタジー」という組み合わせに最初は戸惑う読者も多い。
しかしランボーのような強さのヒロインが縦横無尽に暴れまくる。
しかもただ強いだけではなく、バルサには「弱さ」も描かれている。
癒せない心の傷を抱えており、その痛みを抱えているがゆえに弱者に対して優しい。
彼女は他人の痛みに超敏感なのです。
この点こそがバルサが読者から共感を得ている理由だと推測します。
守り人=誰かを守るという意味。
ここで彼女の母性本能が描かれていることも無視はできません。
女主人公だからこそできたことです。
最初の守る相手は皇太子。
オヤジから狙われるという不幸な子という設定はシリーズを通してずっと続く。
敵は暗殺集団『狩人』
上橋作品の特徴として、敵はステレオタイプの悪役ではなく、善と悪が複雑に絡み合っている場合が多い。
狩人という存在も同様。
バルサと狩人という人間同士の争いの中に、ラルンガという化け物が登場すると
今度は人間同士が結束し化け物に対峙するようになる。
このラルンガという本作品のラスボスの姿が強烈。
蜘蛛のような、イソギンチャクのような、ヒトデのような六本足で背中に六本の爪があり
ツメの周りに口があり、その口には触手があるという描写。
とりあえず気色悪いということは分かる。
読後、ネット検索でラルンガの映像を見てはじめてなるほどと納得できる。
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では登場人物を見ていきましょう。
まずは皇太子チャグム。もう1人の主人公チャグムは、このときはまだ憎らしい。
はっきり言ってむかつくクソガキにしか思えない。
バルサとタンダに「おまえら結婚しないの?」など質問。やかまわしいわと言いたくなる。
しかし彼は体内に化け物を宿しており
いつか体を割いてその化け物が出ててくるというエイリアンのような設定になっている。
この子の死に対する純粋な恐怖心は伝わってくるが、あまりにも生意気なので好きにはなれない。
1巻のときは本気でチャグムにくたばってほしいと願っていたが
不思議なことに4巻目には好きになっていた。だから上橋は巧いと言われる。
物語はオヤジが息子を殺そうとするところから始まり、それをバルサが守り通すことで決着する。
けっこうシンプルだがそれにナユグ(あの世)だとかサユグ(この世)だとか
上橋造語が頻発し慣れるまではとにかく読みづらい。
ようするにナユグは、映画「千と千尋の神隠し」の異世界だと解釈してもらって結構だ。
ファンタジーというのは想像できない描写が多い。
あまり深く悩まずに読むことをお勧めしたい。
タンダはドラクエでいうと回復系の僧侶のような存在で実質的に役に立っていない。
見ていてイライラしてくる優男だ。
彼は行くあてもないバルサが最後に帰ってくる「場所」としてのみ存在している。
女性が強くて輝く存在であるがゆえに、比較対象となる男性は女性的で優しくそして弱くふがいない。
無用の長物だ。個人的には1作目は本格的に面白くなる前の序章に過ぎないと思っている。
1作目を読んで「この程度か・・」と思った大人の読者がいたら
だまされたと思って二作目を読んでもらいたい。
守り人・旅人が真の大人でも楽しめる小説だということが実感できるのは、実は二作目からなのです。
さて、この小説は大人向けか、子供向けか、としきりに議論されているので
参考のために40代の私が評価しておきましょう。
1作:精霊の守り人・・子供向け。2作:闇の守り人・・大人向け。3作:夢の守り人・・少女向け
4作:虚空の守り人・・青年向け。5作:神の守り人・・中年向け
いかがでしょうか?確かめたいならやはり読むことです。
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