逮捕されるまで 市橋達也

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殺人者の本が、図書館に置いてあるという事実。
遺族にとっては、傷口に塩を塗られる心境かもしれません。
逃亡経路は、東京→北関東→静岡→東北→四国→沖縄→関西→九州 
本人いわく「卑怯にも逃げてしまった」と書いてあります。
しかし卑怯とは思っていないだろう。
むしろ逃げることに対して、何の葛藤も迷いもない。
以下、本文より抜粋。


ナタの柄でヘビの首を押さえてスコップの刃で首を切った。首を落とす瞬間、ヘビの牙から液が垂れて地面の砂につくと、ジュッと音がした。毒ヘビだと思った。毒ヘビは首に毒嚢があり、内臓にはサルモネラ菌がいる。そうサバイバルの本に書いてあったので、首の部分は大きく切り落として、肛門から包丁を入れ慎重に内臓を取り除いた。ブツ切りにして焼いて食べた。 


毒蛇を食べるぐらいだったら、おとなしく刑務所に入った方がマシだろ?と素直に思った。

ハリソンフォードの映画「逃亡者」だってここまでザバイバルな逃亡生活は送っていなかったはずだ。この文章で何が理解できるか?つまり彼は逃げることを渇望していたのだ。罪の意識から、逃げることをやめよう、とは頭の片隅にも無かったはずだ。
どういう男だったのか?タフだと思う。それと同時に知識が豊富だ。
彼は読書好きで、逃亡中も小説を読んでいた。医学を目指していたそうだ。挫折したエリートだったのかもしれない。この本を読む限り文章力はないように見えるが、主観を極力排除し、事実を淡々と描いているのは意図的だと思われる。感傷的になることもわざと抑えているように見える。
特に上記の蛇を殺して食べる描写などはその象徴だと考える。


逃亡が長続きした理由は3つあるとおもう。
1・・逃げたいという強い気持ち。普通だったらあきらめる。蛇を食いたくないし。
2・・知識の豊富さ 行動力というのは突き詰めれば知識だと思う。彼は知識があった。
3・・インターネット  やはりネットは逃亡の大きな武器になっていたように感じる。
   それと同時にネットで検索したワード(言語)が後で警察に調べられると理解していた。
   

社会の底辺を描いた描写が印象に残った。それは大阪のあいりん地区である。彼は人を殺して底辺に堕ちた。あいりん地区には路上生活者が数多く居住し、住所不定の日雇労働者が多い。身分証明証がなくても宿泊、就労、銀行口座開設ができる。いわゆる無法地帯、日本のスラム街と呼ばれている。
最初から底辺にいるものは、底辺の生活や底辺の環境に違和感を感じない。しかし、市橋のように、突然底辺に堕ちた人間は、環境のギャップが生じるために観察眼がするどくなる。それを簡潔に文章にまとめている。しかし、類は友を呼ぶ、という言葉があるが、悪のレベル度は違えども、人殺しも、詐欺も、怠け者も、けっきょく同じ場所に吸い寄せられるのだと思った。

私は、悪い人間になれば周りに悪い人間が集まってくると思っているし
良い人間の周りには良い人間が集まってくるという考えを持っている。

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