上橋氏の守り人・旅人シリーズはドラマ化もされて注目を集めている。
しかしシリーズ全体として評価されているサイトが見受けられないと感じる。
よって本誌が独断と偏見を持って点数をつけランキングを公開したい。
↓の表題をクリックすると評価内容が見られるので参考にしてもらいたい。

ランキング1位 5.0点  闇の守り人  シリーズ第二作
ランキング2位 4.5点  神の守り人  シリーズ五作目
ランキング3位 4.3点  虚空の旅人  シリーズ第四作目
ランキング4位 3.0点  精霊の守り人 シリーズ第一作目
ランキング5位 1.0点  夢の守り人  シリーズ三作目

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本誌評価★★★☆☆ 3点
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「中年女」と「ファンタジー」という組み合わせに最初は戸惑う読者も多い。
しかしランボーのような強さのヒロインが縦横無尽に暴れまくる。
しかもただ強いだけではなく、バルサには「弱さ」も描かれている。
癒せない心の傷を抱えており、その痛みを抱えているがゆえに弱者に対して優しい。
彼女は他人の痛みに超敏感なのです。
この点こそがバルサが読者から共感を得ている理由だと推測します。
守り人=誰かを守るという意味。
ここで彼女の母性本能が描かれていることも無視はできません。
女主人公だからこそできたことです。
最初の守る相手は皇太子。
オヤジから狙われるという不幸な子という設定はシリーズを通してずっと続く。
敵は暗殺集団『狩人』
上橋作品の特徴として、敵はステレオタイプの悪役ではなく、善と悪が複雑に絡み合っている場合が多い。
狩人という存在も同様。
バルサと狩人という人間同士の争いの中に、ラルンガという化け物が登場すると
今度は人間同士が結束し化け物に対峙するようになる。
このラルンガという本作品のラスボスの姿が強烈。
蜘蛛のような、イソギンチャクのような、ヒトデのような六本足で背中に六本の爪があり
ツメの周りに口があり、その口には触手があるという描写。
とりあえず気色悪いということは分かる。
読後、ネット検索でラルンガの映像を見てはじめてなるほどと納得できる。
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では登場人物を見ていきましょう。
まずは皇太子チャグム。もう1人の主人公チャグムは、このときはまだ憎らしい。
はっきり言ってむかつくクソガキにしか思えない。
バルサとタンダに「おまえら結婚しないの?」など質問。やかまわしいわと言いたくなる。
しかし彼は体内に化け物を宿しており
いつか体を割いてその化け物が出ててくるというエイリアンのような設定になっている。
この子の死に対する純粋な恐怖心は伝わってくるが、あまりにも生意気なので好きにはなれない。
1巻のときは本気でチャグムにくたばってほしいと願っていたが
不思議なことに4巻目には好きになっていた。だから上橋は巧いと言われる。
物語はオヤジが息子を殺そうとするところから始まり、それをバルサが守り通すことで決着する。
けっこうシンプルだがそれにナユグ(あの世)だとかサユグ(この世)だとか
上橋造語が頻発し慣れるまではとにかく読みづらい。
ようするにナユグは、映画「千と千尋の神隠し」の異世界だと解釈してもらって結構だ。
ファンタジーというのは想像できない描写が多い。
あまり深く悩まずに読むことをお勧めしたい。
タンダはドラクエでいうと回復系の僧侶のような存在で実質的に役に立っていない。
見ていてイライラしてくる優男だ。
彼は行くあてもないバルサが最後に帰ってくる「場所」としてのみ存在している。
女性が強くて輝く存在であるがゆえに、比較対象となる男性は女性的で優しくそして弱くふがいない。
無用の長物だ。個人的には1作目は本格的に面白くなる前の序章に過ぎないと思っている。
1作目を読んで「この程度か・・」と思った大人の読者がいたら
だまされたと思って二作目を読んでもらいたい。
守り人・旅人が真の大人でも楽しめる小説だということが実感できるのは、実は二作目からなのです。
さて、この小説は大人向けか、子供向けか、としきりに議論されているので
参考のために40代の私が評価しておきましょう。
1作:精霊の守り人・・子供向け。2作:闇の守り人・・大人向け。3作:夢の守り人・・少女向け
4作:虚空の守り人・・青年向け。5作:神の守り人・・中年向け
いかがでしょうか?確かめたいならやはり読むことです。
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本誌評価は★★★★★ 5点
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ファンタジーでありながら、シリーズのなかで一番ミステリー色が濃い作品。
これははっきりいって泣きました。死人に口なしという諺があります。
その意味は、「死んだ者に無実の罪を着せても、何の釈明もできないこと」のたとえ。
まさにこの物語はそれに尽きる。一巻ですでに死亡しているジグロを中心に物語は進む。
死人に口なしとはジグロのことです。
また、バルサも故郷では死んだことにされていた。そんな死人が故郷に帰ってきたわけです。
バルサが帰ってきて喜ぶ人と困る人たち─。今から何かが始まると言う期待感がハンパじゃない。
読者のみが事実を知っている。悪党が善人の皮をかぶっている。
ゆえに焦燥感を持って一気読みしてしまうような仕組みになっている。
バルサが暴れまくり、国中が1人の中年女のためにパニックになるところが痛快無比で楽しい。
敵たちの「このおばちゃん、強ええ~」というリアクションが良い。
毒を使うあたりも必死さが伝わってくる。
バルサの戦い方のスタイルは当然のことながらジグロそっくりだ。
だからジグロに罪をかぶせた悪人たちは、ジグロの亡霊が蘇って復讐しているかのような
不気味さを覚えるのは当然でしょう。巧い、実に巧い物語の作り方だ。
作者の才能は素晴らしい。本当に天才的な描写が続きます。

バルサの叔母のユーカはウソで固められたジグロ悪党説を25年間も信じていた。
この25年間という長さが絶妙です。とっくに諦めている、もうなにも期待していないという長さです。
バルサから真実を聞かされてその話に夢中になりすぎて気が付いたら朝になっていた
というシーン、何度読んでも楽しい。愛する人が悪人だと絶望していた人が、
その日のうちに真実を聞かされる瞬間の興奮が伝わってくる。ムチャクチャ嬉しい。
ジグロというのは最強の強さを誇り、国の英雄でした。
それが悪の象徴にされてしまった理由は、バルサを助けたから。
簡単に言うと、バルサは「悪魔の子」だったわけです。
生きていてはいけない存在だったのです。
バルサ自身、「生」に投げやりだ。
彼女は太宰の人間失格よろしく「生まれてきてごめんなさい」という生き方をしている。
この瞬間、一気にバルサが愛おしくなってくる。
バルサが抱える闇がようやく2巻ではっきり見えてくるわけです。↓はドラマ版のバルサ。
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バルサを助けたことで、ジグロは後悔がなかったかと言えばそうでもないような
心の揺れ動きも描写されている。
「パルサさえ、いなければ….ジグロは、何度、その思いを押しころしてきたことだろう。」
→これはバルサの深読み。
そんなバルサの思いを知ってか、ジグロはこんなことを言っている。
「バルサ、俺は夢を見ながら、考えてた。俺がたどってきた道の、どこかで、別の道を選んでいたら、もっとよい人生が、あったのだろうか、と。」
→つまりバルサを助けなかったら英雄のままでいられたのではないかと言う意味。
「答えはな、・・・もう一度、少年の日にもどって、人生をやりなおしていい、といわれても、きっと、俺は、同じ道をたどるだろうってことだった。」
この文章を読んだあと、もう鼻水しか出ない。もう号泣です。
ジグロさんはマジで良い奴でした。
何のために守るのか?己の利益のためじゃない。
ジグロがバルサを守ったように、バルサも守り人として守る道を歩んでいく。
まさに闇の守り人は、守り人シリーズの原点でありながら頂点。
シリーズ最高傑作と言っても過言ではないでしょう。
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本誌評価は★☆☆☆☆ 1点
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本作品は「あの世」と「この世」がテーマです。
そのテーマが好きではない私にとっては決して面白い作品だとは言えない。
傷ついたバルサのホイミ回復役のタンダが主役級の扱いだ。
しかもこのタンダ、役に立つどころか、タイヘン迷惑をかけている。
基本的にホイミしか能がない男だが
今回は敵にそそのかされて、バルサに襲い掛かってくる。困った奴だ。
人鬼というらしい。
しかし痛いという感情が欠落しているのでゾンビと似たようなものでしょう。感染はしない模様。
それから、トロガイ師の若かりし日の恋物語まで描かれている。
はっきり言わせてもらうと気色が悪い。
この作品の表紙にトロガイ師らしき人物が描かれているが、まさに妖怪。
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若いころの顔など想像できない。想像したくない。
トロガイ師が子供を産んだことがあるだとか
恥じらいのある乙女だっただとか、まったく興味が湧かなかった。
別にトロガイ師に悪意はないが、彼女は善人であるよりも、悪の華のように
不敵な人物として描いてくれた方が面白い。
そのトロガイ師の弟子のタンダ。それにしても本作品のタンダはうざい。
非常に迷惑な存在として描かれている。
正直、ラストでバルサが愛するタンダをやむえず倒して
「タンダよ、おまえのぶんまで力強く生きていく」と宣言してくれたら最高だったが
残念にもタンダはくたばらなかった。
守り人シリーズの愛読者の代表として言わせていただくと、タンダは、いりません。

この守り人シリーズの特徴として、肉体から魂が離れるという描写がある。
これは別作品「鹿の王」でも見られたがどうもそれを想像することがとても困難で面白みに欠ける。
魂抜け、魂呼ばい、上橋ワールドならではの造語が登場。
魂を別の動物にうつして行動することもある。それができるのは基本的に呪術師らしい。
まあどうでもいい。
4巻になると、チャグム皇太子もいつのまにか魂だけで飛び立つことができるようになっている。
本当にどうでもいい。
ファンタジーだから許容範囲には入る。しかし想像力が働かない。追いつかない。
それから20歳に見えるが実際は52歳という歌い手も想像するのがかなり難しい。
この作品は本当に想像するのが難しい。
ラスボスの花番も男になったり、女になったり、これも想像するのが難しい。
ファンタジー色が濃いと言えばそれまでですが
妄想に近い。夢の守り人というか妄想の守り人と言った方がいいと思います。
チャグムもチラリと登場する。まだこの段階ではスネ夫臭が抜けていなくて少しイラッとする。
前二作は、アクションが多かったが、本作品は基本的には味方が敵になって襲ってくるので
思い切った戦いにはなっていない。そこが若干消化不良気味となっている。
バルサじたいは逃げ回ってばかり。夢のなかで大暴れすることもなし。
基本的には魂だけになって、花番のなわばりから逃げだして終わりという感じに見えてしまう。
ちなみに前二作はバルサが守り人だが
本作は、タンダやトロガイら呪術師が守り人という扱いになっている。
呪術師は夢のなかで人々を死の縁ぎりぎりのところから連れ帰る役目を帯びているらしい。
それが夢の守り人だと。
分かったような、分からないような・・。どうでもいいような・・。
キーワードは、夢、歌、花、三作目は少女向けだと感じました。
タンダ好きには必見。しかしアンチタンダの私は終始いらいらして読み終えました。
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本誌評価は★★★★☆ 4.3点
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バルサが登場しないため、読者によっては読まない可能性もあるが
この作品は面白いです。それだけは伝えておきます。
上橋ファンタジーの特徴は、政治色が濃いところにある。
つまり各王国をしっかり描いている。
各王国をしっかり描くためにはその国の民族をしっかり描く
民族対立や差別をしっかり描く。
それでいて暗くならないのは各地域に根差した風変わりな動物を細部まで描いたり
その国の食べ物をしっかり描いているからだと思う。
本作品はサンガル王国という国が舞台です。
この国の描写が非常緻密で脳裏に浮かんでくるほどです。
また、今回はアクション性は希薄ですが冒険度が高い。
遠い異国の国で冒険しているような感覚を味わえる。
舞台は海であるため、情景が美しい。
キーワードは「海」と「海賊」と「王国」です。
ファンタジーの王道と言って良いでしょう。
サンガル王国は空が真っ青で、暑い南国の国。
海賊という存在が王国のイメージと重なっている。
海賊臭を残した王族のタルサンが
今回の主人公チャグムの青臭い顔が気に食わずにぶん殴るシーンが痛快だ。
このタルサンの人物描写がなかなか面白い。
猪突猛進の王子であり、まんまとラスボスに操られてしまうのだが
どこか憎めないキャラクターとなっている。
この物語はなかなか先が読めないつくりになっている。
タルサンが助かるのかどうか、ハッピーエンドかほろ苦いバッドエンドか?
それが最後まで読み切れない。
物語の結末を左右する一番の要素は『ナユーグル・ライタの目』になってしまったエーシャナという少女。
彼女も助かるのかどうか最後まで読み切れなかった。

スリナァという泳ぎのうまい少女がこの物語の影の主人公。
ある意味でスリナァちゃんの大冒険劇という見方もできる。
この子がすごい。突然真っ暗闇の海で襲われるのだがこの子だけが助かる。
そのあとは、ディズニー映画「モアナ」のような海の大冒険をたった1人で行う。
本作品はモアナと似ており、海の匂いがする小説だ。
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たった1人の少女がどうやって強大な王国を動かすのか読者は興味津々に読み進めていくでしょう。
この少女はバルサのように強くはない。
しかし弱いながらも、家族を助けようとする思いや
親友のエシャーナを助けようとする思いは伝わってくる。

アンチチャグムだった私だが、本作品から彼を見直すようになった。
貴族臭が薄れ、人間臭さが見えるようになった。
弱者に対する痛みを理解するようになった。
特に死亡フラグが立っていたエーシャナを何とか助けようとするところがいい。
読んでいてハラハラする理由は結末が読めないからです。
助けたい人物たちが助かる見込みが見つからないことが大きい。
タルサンは王子殺しの未遂犯。助かるイメージが湧かない。
エシャーナも王様殺しの未遂犯。どう決着をつけるのか想像もできない。
両者を助けるための落としどころが見えてこなかった。
特にエシャーナなど王国にとっては蚊のように小さな存在。
「大義」のために消されても仕方ないことだという描写が続く。
この時点でほろ苦いバッドエンドが頭にちらつく。
だからこそ、スリナァちゃんが真っ黒の海の中に飛び込んだときは感動しましたね。
そのあとにタルサンも続いて飛び込む。
お前らバカかと言いながら涙を流してしまった。
そして最後は怒涛の大ハッピーエンド。やっぱりハッピーエンドは素晴らしい。
現実は厳しい世界です。
しかしせめてファンタジーの世界だけは常にハッピーエンドであってもらいたい。
上橋ファンタジーを読んで心から良かったなと思える作品でした。
南国の世界にずっと浸っていたくなります。
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